降圧剤:データ操作 京都府立医大が謝罪 学長ら会見
毎日新聞 2013年07月11日 21時38分(最終更新 07月12日 00時59分)
◇ノバルティスファーマ元社員がデータ解析
今後はノ社の不正への関与が焦点となる。事態を重く見た厚生労働省は、文部科学省と連携して再発防止策を協議する方針。府立医大は、学長らの給与を自主返納する。吉川学長は「深くおわびし、再発防止に努めたい。申し訳ございません」と謝罪した。関係者の処分も検討する。
論文の責任者は松原弘明元教授(56)。研究チームは、2000年のバルサルタン発売後、医大病院とその関連病院で臨床試験を実施した。高血圧患者約3000人を、バルサルタン服用の約1500人と別の
服用の約1500人とに分けて、経過を比較。「バルサルタンには他の より脳卒中を45%、狭心症を49%減らす効果がある」などと結論付け、09年に学会誌で発表した。
この日の発表によると、府立医大が、研究チームの事務局が保存していた患者データ約3000例について調査したところ、医師の入力データでは脳卒中などの発症に差が見られなかったのに、解析に使われたデータでは、バルサルタンの方が発症を抑制することになっていた。
また、カルテをたどれた223人分を分析。解析に使ったデータには、カルテに記載のない脳卒中や狭心症などの症例があったり、カルテに記載のある患者の症例がなかったりする例が計34件存在した。いずれも同種の
に比べてバルサルタンの効果を強調する方向で操作されていた。
大学の聞き取りに対し、松原元教授は「意図的なデータ操作はしていない」と説明したという。
ノ社からは、府立医大側に1億円余の寄付金が提供されていたことが分かっている。ノ社は5月、社員の試験への関与を認めたが、「社員による意図的なデータの改ざんはなかった」と説明。だが、社内調査結果によると、ノ社の社員が患者のデータを自宅のコンピューターにコピーして解析し、「例示」と称して研究チームに結果を提供していた。【河内敏康、八田浩輔】
ノバルティスファーマの話 大学や患者に心配をかけて申し訳ない。ただし、大学の報告だけでは、恣意(しい)的なデータ操作があったとは確認できない。
◇ことば【バルサルタン】
ノバルティスファーマが商品名「ディオバン」で、2000年に国内販売を始めた高血圧治療薬。12年度の国内売上額は約1083億円。世界約100カ国でも承認されている。京都府立医大と東京慈恵会医大が各3000人を対象にした大規模臨床試験では、血圧を下げるだけでなく、脳卒中や狭心症のリスクも小さくする効果があり、同種の別の薬より優れているとの結論が出た。
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