2013年4月30日火曜日

産経新聞:薬効データ改竄 信頼回復と再発防止急げ

薬効データ改竄 信頼回復と再発防止急げ

2013.7.14 03:05 主張
 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「ディオバン」に関する京都府立医大の臨床研究データが改竄(かいざん)されていた。
 同大の発表によると、他社の高血圧治療薬よりも脳疾患や心臓病に効くように偽装された。降圧剤としては、効き目に問題はなく、従来通りに服用できるという。
 薬効データの改竄は患者と社会に対する背信行為である。今回の事態の全容を徹底解明して公表するとともに、再発を防ぐ措置を取ることによって、失われた信頼を取り戻さなければならない。
 改竄は、京都府立医大が患者のカルテと臨床研究のデータを比較した調査で判明した。ディオバンを使った患者の疾病発生数を人為的に減らすなどして、データ上、薬の効能を過大に見せていた。
 ノ社は「恣意(しい)的なデータの操作があったとは確認できない」と弁明し、臨床研究の責任者だった教授は「不正なデータ操作に関与していない」と否定している。
 だが、この治療薬は年間1千億円余を売り上げるノ社の看板商品だ。利益追求のために研究結果がゆがめられた疑いが濃い。
 京都府立医大は「限界があり、これ以上の調査は行わない」としているが、究明が甘くはないか。臨床研究には他の4大学も参加していた。各大学ともしっかりした調査を進めてもらいたい。
 厚生労働省も再発防止策を検討する委員会を早急に設置する。その際、誰が何の目的で改竄したのか、製薬会社と大学との癒着の有無とその態様、といった諸点の真相を明確にしたうえで、予防策を講じる必要があるだろう。
 今回、ノ社が臨床研究の5大学に奨学金を提供し、京都府立医大の研究室には計1億円を寄付していたことも明らかになった。ノ社の社員が別の肩書で5大学の臨床研究のデータ解析に参加していたことも、問題化している。
 いずれも研究の中立性に疑義が生じる「利益相反」に当たる。臨床研究データの解析は本来、第三者機関に任せるべきで、利害関係者の製薬会社社員が参加することなどあってはならない。
 ここ数年、研究者の論文改竄が相次ぐ中でも、1医大で約3千人もの患者が協力した大規模臨床研究での不正は異例だ。臨床研究のあり方や産学連携が揺らぎかねない深刻な事態であることを、関係者は肝に銘じてほしい。

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