2013年7月5日金曜日

WSJ: ノバルティスの日本でのデータ改ざんスキャンダル、海外では影響なし


ノバルティスの日本でのデータ改ざんスキャンダル、海外では影響なし




    By 
  • KANA INAGAKI 
 【東京】スイスの製薬大手ノバルティスは、同社にとって世界第2の市場である日本で、同社最大の製品の効果をうたった臨床研究論文が撤回され、大きな問題に直面している。
 ノバルティスが関係した臨床研究についての2つの大学による調査で、研究データが加工されて不正確な結論が導き出されていたことが明らかになった。同社はデータ操作への関与を否定する一方、人気の高血圧治療薬ディオバン(一般名バルサルタン)の降圧剤としての効果を擁護した。
 少なくとも8つの日本の病院は、この問題を受けてディオバンの処方をやめると表明した。東京のある病院長は声明を発表し、効果に疑問がある医薬品を使い続けることには倫理的に問題があると指摘した。
  ノバルティスは2000年、日本で同薬を降圧剤として発売した。その後、日本の5つの大学での研究に基づいて、心不全や脳梗塞のリスク低減にも効果があるとされた。しかし、一部の独立研究者は昨年から、この研究結果に公に疑問を呈してきた。
 ノバルティスの日本法人の二之宮義泰社長は最近の記者会見で、「日本の医師主導臨床研究の信頼性を揺るがしかねない事態を生じさせたこと、そして、これらの5つの研究の論文を引用して、バルサルタンのプロモーションを行ったことについて」謝罪した。
 このスキャンダルは米国では限定的な影響しかみられないようだ。心臓専門医らは、ディオバンは血圧を下げるために、また心不全患者および心筋梗塞を起こして生存している患者の治療用に広く使われていると述べている。クリーブランド・クリニックのスティーブン・ニッセン心血管科部長は「適切な患者へのこの薬の投与をやめる理由はない」と話した。
 米食品医薬品局(FDA)は、ディオバンは米国で15年以上にわたって数百万人の治療に使われているとしている。FDAの広報担当者エリカ・ジェファーソン氏は「この薬の安全性と効果は確立されている」とし、「FDAはこの薬に関して新たな安全上の懸念は抱いていない」と述べた。
 日本の2つの大学はこの1カ月間に、研究で得られたデータは「操作」されており、ディオバンの複数の効果に疑問を呈して、この研究結果を否定した。1つの大学の調査では、1件の臨床研究の生データは心血管疾患のリスクを低減させなかったことが明らかになった。もう1つの調査では、患者の血圧の生データは統計解析の段階で変えられた公算が大きいとされている。両大学は、調査では誰がデータを変えたのか、確たる結論は得られなかったとしている。
 他の3大学も調査を開始したが、まだ終了していない。厚生労働省も8月に入って独自の調査を始めた。
 医学研究については現在、その正確さが世界的に追及されるようになった。トムソン・ロイターのウェブ・オブ・サイエンスによると、昨年1年間に科学誌から撤回された論文は415件と、2002年の46件を大幅に上回った。
 東京大学医科学研究所の谷本哲也客員研究員は「臨床医学論文の撤回は世界的に増えている」とし、「去年ぐらいから国際的に大きく取り上げられるねつ造事件が日本から多く出てきている」と語った。ディオバン・スキャンダルは2以上の疾患を治療できるヒット商品の開発・販売競争も明らかにした。特定非営利活動法人臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)の桑島巌理事長は「単なる血圧を下げる薬では売れ筋にはならない。血圧を下げることに加え脳卒中や心筋梗塞の予防効果があるということを証明する競争があった」と指摘した。
 スイス・バーゼルのノバルティス本社の広報担当者エリック・アルトホフ氏は、米国を含む25カ国で行われた試験で得られたのと同様の研究結果が問題なしとされているとして、ディオバンの薬効に変わりはないと述べた。同社は、日本の研究では「利益相反」があったことを認め、これは明らかにされるべきだったが、明らかにされなかったことは「不適切」だったとした。同社はまた、1人の従業員が5件の研究すべてに参加していたことを知っていたが、参加者リストにはその従業員が非常勤で務めていた大阪市立大の講師としてだけ載っていたとしている。ノバルティスの調査委員会によると、この従業員は2件の研究の統計分析に関与し、他の研究でもデータの扱い、研究方法の企画や運営に関わっていた。同社によると、同従業員は契約期間が終了したあと5月に退社した。
 アルトホフ氏はウォール・ストリート・ジャーナルの問い合わせに対する電子メールでの返答で、元従業員による「データの意図的な操作や改ざんを示す」証拠はないと述べた。
 ディオバンはかつては同社のベストセラー商品だったが、11年に欧州で、翌年に米国でその特許期限が切れたのに伴い、世界売り上げは28%減少した。今年中に特許期限が切れる日本での売上高は世界全体(昨年は44億ドル=4230億円)の約4分の1を占める。
 桑島氏は、日本の高血圧患者は推定4000万人に上り、日本の降圧剤市場は世界最大級で競争も最も激しい国の一つになったと指摘した。日本ではアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)と呼ばれる降圧剤としてディオバンのほかに、少なくとも6種の薬が販売されている。





TOKYO—Swiss drug giant Novartis AG faces a mounting problem in Japan, its second-largest market, where researchers have retracted studies that touted the benefits of the company's most popular medicine.



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